“性教育”をYouTubeで伝えるシオリーヌさん「性について“話せない”というタブー感を変えていきたい」


助産師であり精神科の看護師として病院に勤務しながら、YouTuberとしても活動している一人の女性がいる。

性教育YouTuberの“シオリーヌ”こと、大貫詩織さん。

2019年2月にチャンネルを開設すると、登録者数は徐々に増え続け、現在は約3万9千人。『性の話を気軽にオープンに』をテーマに、性教育にまつわる動画コンテンツを日々配信している。彼女の動画を観ている主な視聴者層は、6割から7割が25歳以下の女性だ。

性教育を伝える場所としてYouTubeを選んだ理由や、日本の性教育の現状などについて、彼女に思いを聞いた。

性教育YouTuberのシオリーヌさん

“ここを見てね”という場所を自分で作りたかった

元々、助産師・精神科の看護師として勤務する中で、性教育に関するイベントを主催したり、学校やオープンスクールで講演を行ってきたというシオリーヌさん。

YouTubeでコンテンツを発信するようになったきっかけは、何だったのだろうか。

活動を続ける中で、学校のような場所では伝えられることに限度があるというか。学校の先生方の知識や価値観によって左右される部分があると感じるようになったからですね。

例えば、「エイズの予防にはコンドームが有効だ」とまでは言っていいけど、それに加えて、コンドームがどこに売っていて、どうやって買えばよくて、どう装着して、行為の後にはどう処理するとかまでは「言わないで」と言われる。

あまり具体的に言いすぎると、生徒や児童がそれを(コンドームを)使うことを推奨しているように思われるからというのが、その理由です。

学校の授業で話せる時間は、最大でも2時間くらい。それでは短すぎて、内容がものすごく限定的になってしまうんですよね。

性教育って、本来は物凄く幅広い。

妊娠出産のメカニズムから、第二次性徴のこと、体の仕組みやケアの仕方、パートナーシップ、避妊や中絶のこと、セクシャリティ、最近ではLGBTのことなど、全部を話そうとすると1日じゃ到底無理なんですよね。どれも大切な事柄なので、1つでも欠けてしまうと、伝えている自分自身も無責任だなと感じてしまうんです。

一回の出会いだけでは最低限のことしか伝えられないので、自分でより深く気になるトピックがあった時には、“さらにここを見てね”と言えるような場所を自分が作りたかった。

児童・生徒の中には講演の後に私のYouTubeを見てくれて、コメントを残したりしてくれているので、私のコンテンツが彼らの「アフターフォロー」になっていればいいなと。

若い世代の人たちへの性教育はまだまだ不十分で、正しい知識をちゃんを持っていない子達が多いので、そこはやはり大人たちが責任を持って伝えていかなきゃいけないと思うんです。

性教育、海外では「遅くても5歳から」

日本の現在の性教育は「遅れに遅れている」と、シオリーヌさんは警鐘を鳴らす。海外と比べると、日本の性教育はどの程度遅れているのか?

性教育には、国際基準のマニュアルがあります。ユニセフやWHOが協力し、ユネスコによって発行されている『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』というガイドラインです。

それを見ると、国際的には性教育って「遅くても5歳までに始めてください」と書いてあるんです。「遅くても」ですよ?

加えて、マニュアルには単発的ではなく継続的に・段階的に性教育を行っていく必要があると書かれていて、各年齢に応じて、理解度の目標が記載されているんです。

例えば、小学校では妊娠・出産の仕組みがきちんとわかることが目標とされている。これはイコール、セックスのことが正しく分かるということを意味します。小学生でそのレベル。

そして中学に上がったら、自分で避妊法とか中絶に関することとか、パートナーとの交渉や同意、拒否といったコミュニケーションに至るまで性教育で扱うようにと言及があるんです。

これを踏まえると、日本の現状としては全然出来ていないと感じます。日本の性教育って、すごく“単発”なんですよ。

例を挙げると、小学校の高学年になると急に生理とか精通の話をされるし、そこからしばらく間が空いて、中学になるとまたいきなりエイズとか性感染症の話をされる。

これまで性についてまともに話されてこなかったのに急にそんな話をされても、自分の中でみんな考え付かないですよね。そしてやっと、高校生になって避妊とか中絶について知る傾向にあります。

日本だと、“具体的な性教育を幼い頃から始めちゃうと、好奇心で性行為をする子供達が増えるんじゃないか”という声が上がるんですけど、それに対する答えもガイドラインにはあります。

ガイドラインに沿った性教育を実施した国を継続的に調査したところ、性教育をした国の中で、初体験の年齢が早まった国は実は1つもなかったんですよ。

1カ国だけ“変わらない”という国がありましたけど。それ以外の国は、初体験の年齢が遅れています。

正しい情報があると、子供たちの選択って慎重になる。

そこは子供の力を信じるべきだし、ちゃんと誠意を持って伝えたら子供達には理解するので、そこは子供達を大人が信用してあげたらいいんじゃないかなと思いますね。

問題なのは、“話せない”というタブー感

単発で行われがちな、日本の性教育。状況の改善に向けた課題は、何なのだろうか?シオリーヌさんはこう指摘する。

今、一番大きな課題は“性教育のタブー感”だと思っています。“話せない”というタブー感。これを変えていきたいんです。

例えばですが、「今日のご飯どうする?」「どんなデートする?」とか、「芸能人は誰が好き?」という話題はお互い聞き会えるのに、性の話になると出来ないというカップルが多いんですよ。

他にも、女の子だと「旅行に生理が被りそうだから別の日がいい」とか、セックスにおいても、「それはちょっと痛い」「もっとこうして欲しい」とかって、もっと言いたいはずで。

性にまつわる話って、本来は日常生活の中に根付いていて密接に関わっている事なのに、なんでこんなに語れないんだろうか?って、物凄く思うんですよね。

皆語れないから一人ひとりが悶々と悩んで、物事が深刻化してからやっと専門家に相談に行く。

本当はそうなる前に、コミュニケーションが取れるといいのにと思います。

みんなが“世間話”として身近な人と性の話を語れるようになったらいいなと思いますね。

一方で、これも非常に大切な事ですが、みんながみんな性の話にアクティブになる必要は私はないとも思っています。

別に性に興味がない人は「興味がない」と、はっきり言える世の中であるべきです。

例えば、男の人に対しては“童貞いじり”があったりしますよね?

経験がない人は、なんだか“残念なヤツ”と思われたりとか、経験していないのはダメだとか…。

自ら望んで経験をしたくないって人は「私はいいんだ」と、はっきり言える風潮にしたい。

そして、その意思を表明したとしてもバッシングをされない世の中にしたいし、セクハラのようなことをされたら「それは嫌だ」とはっきりと言えて、言った後に「なんだよノリが悪いな」なんて、他人から言われない社会になって欲しいんです。

みんながそれぞれの思いをオープンに話せるというのが、まずは大事かなと思います。

性の話って、単体だと何もエロな話ではないんですよ。

ただそこに、自分の興味・関心とかパートナーとの関係性が含まれてくるから、エロく聞こえるだけ。

だからまずは私が、性の話を普通に話題としている姿を見せていこうと。

動画を挙げていて、「うちの保健室の先生になってください」というありがたいコメントを頂いたことがありますけど、求めてくれる人たちのために、今後も“オンライン上にいる保健室の先生”みたいな存在でありたいと思っています。

取材後に改めて彼女の動画を観ると、筆者にはタブー感を打破したいという彼女の思いが、ひしひしと伝わってきた。



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