米イラン戦争を回避する方法はある



<主戦派と慎重派の対立で揺れるトランプ――偶発的な軍事衝突を避ける方法はある> ホワイトハウスはいつものように否定しているが、対イラク政策の目的と、軍事的脅威あるいは武力行使の果たすべき役割に関して、トランプ米政権内の対立が明らかになってきた。 主戦論派はイランと戦争がしたくてうずうずしている。相手をけしかけて、軍事攻撃の口実になりそうな行動を取らせようとしているようだ。 ドナルド・トランプ大統領はイランを交渉の席に連れ戻して、より良い核合意のディール(取引)をまとめたいと繰り返している。地域におけるイランの振る舞いと弾道ミサイル開発について、譲歩を勝ち取ろうというわけだ。一方で慎重論派は、戦争に向かいつつあることを憂慮している。中東への米軍の増派を正当化できるかどうかにも、懐疑的だ。 米政権の真の狙いが何であれ、主戦論者と戦争回避論者が合意できるはずのことが1つある。イランとの偶発的な、あるいは意図しない武力衝突は、避けなければならないということだ。 今のところ米政権の行動は、計算違いや誤解、意思の疎通の問題から戦争になだれ込むリスクを、むしろ高めている。イランとアメリカの間に直接かつ頻繁に接触できる交渉ルートがなく、事が起きたときに拡大を防ぐ仕組みがないため、かなり危険な状況だ。 確かにトランプはイランとの戦争に乗り気ではなさそうだ。ただし、選択肢から完全に消えたわけではない。何しろトランプは気まぐれさで悪名高い。しかも、省庁間の意思決定プロセスは完全に破綻しており、さまざまな選択肢や見解が大統領まで届かない。そしてサウジアラビアは、トランプをそそのかしてイランをピンポイントで攻撃させたいようだ。 官僚的な技にたけた武闘派のジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、注意散漫で知識も情報も乏しいトランプを口説き落とすことは十分にあり得る。イランに対して限定的な軍事作戦を行えば、コストもリスクもほとんどないか、一切なしでアメリカの目的を達成することは可能だと、大統領を納得させるかもしれない。 ===== 米政権が戦争を望んでいなくても、緊張はかなり高まっており、イランはアメリカの意図が分からずに不安を募らせている。米軍はイラン軍とその代理勢力の間近に迫っていて、些細なきっかけで衝突しかねない。 米政権が戦争を引き起こすつもりだとしたら、外交的にも政治的にも軍事的にも条件闘争の場をアメリカに有利に整えた上で、アメリカが選んだタイミングと場所で始めたいはずだ。 ロシアを含む3カ国関係 戦争を回避しながら軍事的な圧力を維持するにしても、不用意な武力衝突に発展する可能性は減らさなければならない。 その方法はたくさんある。例えばシリアでは、イラン勢力への攻撃を認める米軍の交戦規則を厳格化すれば、イラン軍の指揮系統から外れた行為が意図せぬ衝突につながるリスクを小さくできる。シリア南西部で、アメリカとイランがそれぞれ支援する軍事勢力間の緩衝地帯を拡大することもできるだろう。 アメリカはロシアに対し、イランに働き掛けを続けて、シリアで米軍との接触を避けるよう強く求めるべきだ。アメリカ、ロシア、イラン3カ国の関係を築いて軍事衝突を回避することに、ロシアがどこまで関心を持っているか、探る必要がある。 イラクでの偶発的衝突を避けるには、アメリカはイラク治安部隊を仲介役として、イラン軍やイランとつながるシーア派民兵組織との間にコミュニケーション・危機管理体制を整えるべきだろう。事件発生時の暴走や激化を防ぐため、アメリカ、イラン、イラク3カ国から成る紛争解決委員会を設立してもいい。 アラビア半島と周辺で想定できる衝突のシナリオはほかにもある。例えば、イランが支援するイエメンのシーア派武装勢力ホーシー派への密輸品運搬の疑いで、米海軍がイランの民間船舶に乗り込もうとして死傷者が出るといった事態だ。16年に起きた事件のように、米海軍艦船が誤ってイランの領海に入り、米兵が拘束される懸念もある。 ホーシー派はイランが提供するミサイルやドローン(無人機)を、イエメン内戦に軍事介入するサウジアラビアの領内に飛ばしている。これによって自国の重要な資産や主要都市が被害を受けた場合、サウジアラビアはほぼ確実にイエメンでの攻撃を激化させる。イランを直接攻撃する可能性もあり、アメリカは紛争に巻き込まれるだろう。 ===== アメリカとイランの間には、従来の船橋間無線通信を除けば、船舶衝突を防止する仕組みが公式・非公式を問わず存在しない。協力すれば、この手の取り決めは比較的早期に実現可能だ。 一方、イエメンでサウジアラビアとホーシー派の対立激化を防ぐため、交渉や規範遵守目的のチャンネル、少なくとも危機勃発の際に意思疎通を図る窓口の設置をサウジアラビアとイランに促してはどうか。 最大のリスクは同盟国 各国海軍間の信頼醸成努力を再開する道もある。日米中など21カ国は14年、西太平洋海軍シンポジウムで「海上衝突回避規範」に合意した。だがペルシャ湾では、イラン革命防衛隊の反対のせいでそうした枠組みが実現していない。アメリカは欧州の同盟国やロシアを通じて、イランに再考を迫りたいところだ。 最大のリスクは、アメリカとイランそれぞれの同盟国や代理勢力の行動かもしれない。独自の目的や思惑がある彼らを制御するのは容易ではない。 米政権はイスラエルやサウジアラビアに、イランからの直接攻撃に反撃を行うことは認めるが、アメリカとイランの軍事衝突を招く行動は受け入れないと言明すべきだ。イランも代理勢力に同様の言明をすべきだ(イラク政府は既に国内のシーア派民兵組織に、アメリカによるイラン攻撃を正当化しかねない行動は慎むよう警告している)。 イラン政府は対米戦争を望んではいないはずだ。しかしこれらの衝突防止策に、あるいはアメリカとの交渉にさえ同意するかは見通せない。イランのジャバド・ザリフ外相は先日、緊張緩和に向けた米政権との交渉の「可能性はない」と発言した。 現時点で、偶発的事件がアメリカとイランの武力衝突に発展する危険性は恐ろしく高い。現場レベルでの危機管理・紛争防止措置を講じるのは、イランとの交渉や緊張緩和を実現する上でリスクの低いやり方だろう。トランプが本気で「反戦」を唱えているなら、イランとの衝突回避に向けた議論を今すぐ始めるよう側近に命じるべきだ。 From Foreign Policy Magazine <本誌2019年06月04日号掲載> ※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。



Source link

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。